■高い安全性 スポーツ外傷治療など 来春以降にも
軟骨は、膝などの関節内の骨と骨の間にあり、骨同士がぶつかるのを防ぐクッションの役割を果たしている。
骨折しても再びつながる骨と違い、軟骨は一度損傷すると戻らない。軟骨には血液も神経も通っておらず、傷を治すために有効な細胞が少ないためだ。
損傷が小さければ、影響の少ない場所の骨と軟骨をごく小さく切り取り、軟骨が欠けた部分にはめ込む方法がある。ただし損傷が4平方センチ・メートル以上と大きい場合は、有効な治療法がなかった。
そこで、広島大整形外科の越智光夫教授は、固形の培養軟骨を作ることを検討し。「アテロコラーゲン」に注目し細かく砕いた軟骨から分離した細胞をコラーゲンに混ぜて培養したところ、ゼリーほどの硬さの培養軟骨を作ることに成功した。
損傷した部分の形に合わせ、培養軟骨の形を整える。手術で損傷部分にはめ込み、骨膜で蓋をして縫い付ける。
自家培養軟骨を使った治療は、04年から広島大を含む全国5病院で治験が行われ、30症例中9割以上が「有用」とされた。
膝のスポーツ外傷と、スポーツなどで関節に繰り返し力がかかって発症する「離断性骨軟骨炎」が治療の対象だ。高齢者に多い変形性膝関節症による軟骨の損傷は、対象とならない。
大学病院などの治療体制の整っている病院が、実施施設となる見込みだ。
越智教授は「自らの細胞を使う自家培養軟骨は安全性が高い。多くの患者さんが痛みがほとんどなく、日常生活に支障がないまで改善する」と話している。
読売新聞(ヨミドクター)で取り上げられました。