今夜放送された”ためしてガッテン”、肩こりについてでしたが、誤りとはいわないまでも余りにも省略した説明です。
胸郭出口症候群、聞きなれない病名ですが整形外科医なら誰でも知っています。
この病気は肩凝りやしびれ、痛み、運動障害に至るまで実にさまざまな症状を呈し、運動器の病気のなかでもわかりにくいものです。
番組で取り上げたのは胸郭出口症候群のなかの牽引型といわれる一部の病型であり、あの治療で治る患者さんはかなり少ないのです。
番組には熊本大学の医師も出演されていましたが、先代の教授の時代から熊本大ではこの病気を研究されています。しかし私が若手医師で雑誌に執筆するため勉強した時代から20年以上経ちますが診断、治療にさしたる進歩は得られておらず残念な結果に終わっています。私の患者さんのなかにもわざわざ熊本まで行って受診された方もおられますが、はっきりしない説明をされただけで全く改善しませんでした。
番組に出てきたバンドは熊本のアドバンフィット社のKSバンドで、あんなものは10年以上前からありますが、効果がはっきりしないので少なくとも広島ではほとんど使われていないと思います。壁押し運動も昔から推奨されています。
胸郭出口症候群の患者さんは手を上に上げると症状が出るタイプの患者さんが多いし、鎖骨のレントゲン像など参考にしかなりません。脊椎の横突起が原因になるタイプや斜角筋という筋肉が神経と血管を圧迫して起こるタイプを完全無視しているのも納得できません。鎖骨が水平だから胸郭出口症候群と診断するのは論外です。問題は神経や血管なのですから。鎖骨の上を押すと痛いのはあたりまえです。
私の専門とする整形疾患なので説明がまるでおかしいのがよくわかるんですが、ほかの血圧やコレステロールなどよその科についての回でもこのような不十分な内容なのかと疑ってしまいます。
インターネットも検索して見ましたが、根拠のない金儲け志向のサイトも多く気分が悪くなりました。
私は実のところ胸郭出口症候群の患者さんを治すことはなかなか難しいと感じています。